おそらく、向こうの人達には理解しきれていないこの状況。
 入隊した時から、ベルは変わった子だった。ずっと一緒だった双子の兄。仲が悪くて、お互いがお互いを嫌い合い、いつだって殺し合っていたそんな存在。その彼を、ある日、ベルはケンカの結果で殺してしまったのだという。
 腕にべっとりとつき、床を汚した、血。殺したことを認識した彼は、どうしようもない快楽をそこに覚えた――らしい。

(悪い子じゃないんだけど、異常さだけで言うなら彼ってヴァリアー随一なのよね……)

 あちらの雲の雲雀 恭弥君が戦闘狂なら、ベルは殺人狂。殺すために暗殺部隊に入った、ヴァリアーきっての変わり者。

(……獄寺 隼人君、どうやって対処するのかしら)

出番です

 ロケットボムを構えた彼は、笑い続けているベルに向かってそれを放つ。けれどそれをベルは避けることなく、必要最低限のボムだけナイフを使って火を斬り、他のボムから起こった爆風を使って大きく前に跳んだ。

「いよいよ奴らしくなってきたな」

 レヴィの呟きに、私も頷いた。

「キレて初めて、ベルは本領を発揮する」

 放ったナイフは狙いがでたらめだと隼人君は避けなかったけれど、頬を裂かれて目を瞠る。彼が混乱して見せた隙を使いベルは近付き、ナイフを片手ににんまりと笑った。

「血ィ」

 一瞬。隼人君の目に過ぎったものは死への恐怖。ただ、彼もそこで諦める人じゃない。チビボムを自分の前に飛ばして、軽い火傷を代償に自分の命を護り抜いた。――肉を切らせて骨を守る。彼も裏世界で生きてきた人間なのだと、改めて感じさせられた。
 ベルを振り払った彼は身をひるがえして走り出す。のろのろと立ち上がったベルは数本ナイフを適当に投げて、また彼の腕を斬っていたけれど行動不能には至らない傷。どこかへと向かった隼人君を追いかけて、ベルもまたどこかへと走り出した。

(確かあれの行き先は……)

 図書館。
 私が思いだすと同時、モニターの画面が切り替わり図書館の景色が映し出された。しばらくして、部屋にジャンプして入ったベルに向かって、隼人君はロケットボムを放つ。それはベルのナイフが斬ったから不発に終わったけれど、なんらかのヒントを得たみたいで微かに眉根を寄せるのが見えた。
 ベルは隼人君を狙っているように見せかけて、何度も何度もナイフを放つ。隼人君はそれを避けるしかないし、見抜くにも時間が必要。そうこうしている間に、ベルの張った罠が、完成した。

(止まった)

 隼人君の動きが、完全に停止する。モニター越しで見にくいけれど、目を凝らせばなんとか見えるきらきらとした微かな光。
 かまいたちの正体も、これであちらにバレてしまったのでしょうね。ナイフにつけられていたワイヤーが風で揺らいで、斬りつける。種を明かせばそれだけの話。だけれどこの種、分かっても対処しにくいタイプのもの。もう少し早く分かった所で、今の隼人君で対処できるはずもなかったでしょう。

「いつ見ても、トリッキーな戦い方」
《それがあいつの強みだからなぁ》

 ぽろりと、隼人君の手から落ちるライター。
 勝負は決まったと言わんばかりの笑みを浮かべていたベルだったけど、彼が落としたライターで、線状に落とした火薬に火がついていたことに気付いて余裕の表情が崩れる。周囲の本棚を倒してワイヤーを緩ませた彼は、ワイヤーを逆から使いダイナマイトをベルの所まで届かせた。
 大量に撃ち込まれるダイナマイト。爆煙の中に消える、ベルの姿。……普通ならば、ここで、終わるのでしょうけれど。
 リングをベルから取るために近付いた隼人君の手を、がしっとベルが、掴む。勝利の本能に突き動かされるベルはいくら殴られても隼人君を離さない。ひたすらに、リングを求め続ける。

「リングを敵にわたして引きあげろ、隼人!!」

 シャマルの指示に、NOを返す隼人君。……でも、今回ばかりはシャマルの判断が正解ね。
 いくらこれで後がなくなるとしても、死んで得られるものはない。私はそれを、思い知った。

「手ぶらで戻れるかよ!!
 これで戻ったら、10代目の右腕の名がすたるんだよ!!」

 聞いていた兄さんが、ふん、と鼻で笑った。

《ガキだなぁ》
「ええ。まだまだ、子供よ」

 けれど、兄さん。それは。

「可能性、ってことなんだって、私は思うの……未熟で未完成。だからどこまでも」

 ――強く、なれる。

(私達のように限りなく完成に近付いた者は、中々成長できないから)

 それはきっと彼らの強み。何かを見出し、1歩進むごとに、確かな成長にできる。
 爆音が迫って、戻れと仲間に急かされる隼人君。ぐっと強くベルを睨んで、彼は言った。

「ここは死んでも引き下がれねぇ!!」
「ふざけるな!!」

 今まで黙っていた綱吉君が、初めて発したものは、荒い言葉のそれ。

「何のために戦ってると思ってるんだよ!!」

 ただの中学生でしかない、彼らが戦う理由。
 たとえば私は後悔をしないため。たとえば兄さんは己の腕を磨くため。
 マーモンはお金のため。レヴィはXANXUSのため。ベルは殺すため。ルッスーリアは死体を集めるため。そしてXANXUSは……誇りのため。
 きっと、私達からみればくだらないものなんでしょうけど。

「またみんなで雪合戦するんだ!! 花火見るんだ!! だから戦うんだ!! だから強くなるんだ!!
 またみんなで笑いたいのに、君が死んだら意味がないじゃないか!!」

 なんて、くだらない。
 だけれどそれが……眩しい。

《はっ……ガキが》

 兄さんが呟くと同時。図書室が爆発の中に、呑みこまれる。

「どちらにしろ、勝負はこれで終わったわね」

 結果はベルの勝ち。根本的には隼人君の勝ち。
 焦げた隼人君が出てきたことに綱吉君達が目を輝かせるのを、黒い煙の向こう側に見る私達。

「すいません、10代目……リングとられるってのに、花火見たさに戻って来ちまいました……」

 よかった、という言葉で迎えられる隼人君。
 チェルベッロが試合終了を告げて、嵐戦はこれで終了。だけど、次に移る前に一悶着あったわね。確か。

「明晩の勝負は――雨の守護者の勝負です」

 私と、山本 武君の目が、合う。
「ようやく、戦えるわね」

 にこりと笑い、私は言う。

「前を思い出して、逃げたりしないでね?」
「ハハッ! その心配はねぇっスよ!」

 彼も同じように、からりと笑う。やっぱり私は女だからなのか、口調がどこか柔らかい。
 目に真剣な光を灯して、彼は言った。

「楽しみで眠れねーよ」

 ――なるほど。やっぱり、あの時とは違い成長しているのね。内側の兄さんもそれを感じたみたいで、ふっ、と楽しげに息を漏らす。

《ガキが……》

 緊迫した空気が張り詰めた場。それを台無しにするかのように、レヴィの部下である雷撃隊の人が飛び込んできた。

「校内に何者かが侵入しました! 雷撃隊が次々とやられています!!」

 ……そういえば、そんなイベントもあったわね。


















あとがき
 悪気はなかった。ただ、なんだろう。書けなかったんだ……orz
 この頃あとがき書いてなかったせいで何書けばいいのかさっぱりです。とりあえず、タイトルに沿った内容にはなったんじゃあないのかなーとかまあ期待してみたりしてみなかったりー、してみたり。どんどん年取るにつれて忙しさ増してます。おかしいね。っていうか8月ってこんなに書き物多い時期だったんだね。
 もしかすると時雨はヴァリアー編くらいで強制終了するかもです。完結したものをずるずるとやるっての、なあ、とか。更新速度酷いですし、ね。ぶっちゃけ継承式編だとかヴァリアー参加回数少ないわ匣ないわ踏んだり蹴ったりですし。まあそこはおいおい?
 では次の更新で!!

10/08/03