嵐の戦いがあるのに、いつも通りにベルは行方不明になっていた。

「困ったわね」
(思ってる口調じゃねぇぞぉ)

 だって、仕事には素直じゃない。あの子。

そして嵐

 夜。
 少し早めに来たつもりだったけれどもうみんな来ていて、遅い、というレヴィの言葉に苦笑することになった。レヴィはいつでも3時間前集合じゃない。

「あまり怪我しないでね。ベル」
「ししっ、楽勝だよ。だってオレ王子だもん」

 そうでもないと思うのだけれど。
 言うことはしないその言葉。獄寺 隼人は決して弱くない。それは、どうしようもなく真実。『ハリケーン・ボム』の二つ名をあの若さで彼は得ているのだもの。
 綱吉君達が11時の10分前くらいに来たけれど、その中に獄寺 隼人の姿はない。――原作、通りに。

「あの時計の針が11時を指した時点で獄寺 隼人を失格とし、ベルフェゴールの不戦勝とします」

 3分前になっても来ない彼に、業を煮やしたチェルベッロがそんな宣言をした。
 1分経った。彼が来る気配はどこにもない。そしてもう1分。同じく、獄寺 隼人の気配はなく、向こうの陣営が焦りだした。彼が逃げる人でないことは、知っているでしょうに。
 残りの1分が、少しずつ狭まる。
 10秒前。5秒前。

(後、2秒)

 彼はくる。間違いなく。思った瞬間。1秒前をかちりと時計が刻んだと思えば、その時計が爆破された。飛んできた、ダイナマイトによって。

「お待たせしました10代目!!」

 カッコよく、颯爽と。遅刻魔の嵐は、いつも通りに送れて着いた。

「獄寺 隼人。いけます」

 ちゃんと対戦相手が到着したことで、嵐のリング争奪戦はいつも通りに行われることとなる。
 フィールドは3階校舎のすべて。嵐の守護者らしく、『ハリケーンタービン』が仕込まれている。無論それには、時限爆弾がついているけれど。

(……XANXUS、)
《あいつにとっちゃあ、お前以外はどうでもいい存在だからなぁ》

 そんなことない。あの人は、それなりに優しい。
 だけれど時限爆弾の指示はあの人が出したものでしょう。部下を見殺しにしても勝つ。どこまでもマフィアらしいやり方をする人。
 そんなことを考えている間に、事態は進んでいた。
 トライデント・シャマルの登場。私は知っていたから驚かなかったけれど、兄さんにとってもそれは驚きだったみたいで私の内側で驚愕の声を漏らしていた。

「噂では2世代前のヴァリアーにスカウトされ、それを断った程の男……」

 そしてそれは、真実。
 XANXUSから聞いていた私は、マーモンの情報の正しさに苦笑する。闇医者であり殺し屋。正反対の職業を兼用する彼は、弟子である獄寺 隼人の応援に来たみたいだった。

「ふふ……なんだか敵は豪華ね」
「笑ってる場合じゃないよ、
《ディーノにコロネロにシャマル……これほどの人材が何故……?》
「兄さん。綱吉君の近くには、トマゾの8代目候補がいるそうだけれど」
《な……!?》

 物語に関わることはほとんどないけれど、彼も綱吉君の味方、になるのでしょうね……私の言葉に驚いたのはマーモンとベルも。今出てきている人だけが、彼の味方というわけじゃない。綱吉君は人を引き寄せることに長けている。それは、私がこの世界に来る前から思っていたこと。

「……あのチビの力、なのかい?」
「まさか……ディーノはともかく、コロネロやシャマルは認めた人間にしか近付かないでしょう?」

 ディーノはお人好しだから。
 小さく内心で呟いた言葉はそっと飲み込んで。私は苦い笑みを浮かべた。

。気にすんじゃねぇ》
「後悔はしてないわ。大丈夫」

 目の前では暑苦しい円陣。
 ヴァリアーの天才、ベルフェゴール。ボンゴレの隠し弾、獄寺 隼人。

(どちらが勝っても、おかしくない戦い)

 されど結果が変化することはないのでしょう。
 思いながら、私はベルの背中を見送る。

「ベル」
「何?」

 きょて、と。彼は少しだけ首を傾げてみせた。

「気を付けて」

 多分私の瞳は揺れていた。苦笑して、ひらりと片手をベルは振る。

「死なないよ」

 目を閉じて、その言葉を噛み締める。
 今は、それだけでいい。死なない。知ってる。だから、大丈夫。
 私の心は、揺れ続ける。



*******************



 戦いは、始まった。
 制限時間は15分。その間に雌雄決することがなければ、どちらも。

《安心しろぉ。ゴキブリ並みに生命力が強い奴だ。死にやしねぇ》
(兄さん……)

 勝負はベルの優勢。一方的に隼人君を押し続けるその手腕は、流石としか言いようがない。
 これではまずい、と一度逃げに出る隼人君。その判断は正しい。けど、今のあなたじゃあ、逃げ切ることなんて不可能。さあ、気付くか、どうか。

「嵐の守護者がこれじゃあ、お前のボスも知れてんな」

 ベルの言葉に、獄寺 隼人の目が見開かれる。
 一瞬髪が乱れ、彼の顔は隠れた。そして次にあげられたその顔は、さっきとはまったく違う表情となる。何かを決めた顔。行く道を定めた者特有の、迷いを消した、それ。

(ベル……)

 起こしてはいけない獣を、あなたは起こしたのかもしれない。
 思考を始めた彼の顔は私に似ている。根っからの参謀――彼より私の方が優秀だという自覚はある。だけれど10年後、私の傍に立つでしょうあの人は、どうなのか。

(……ああ、どうしよう)

 ぞくぞくする……壊したい。

(ベルのこと、言えないわね)

 破壊衝動。それはヴァリアー全員が持つもので、兄さんより弱いしベルやXANXUSとは比べ物にならないけれど、私にだってちゃんとある。
 まさか彼に対して発揮してしまうとは思わなかったわね。10年後、殺しちゃわないようにしないと。

《落ち着けぇ、
(落ち着いてるわよ。一応)

 嘘つけ、とぼやいた兄さんに私は苦笑する。
 落ち着いているのよ? 本当に。ちゃんと破壊衝動だっておさえているでしょう?
 画面に視線を戻せば、隼人君がボムを構えていた。風に弱いボム。当たらない武器。だけど、それで終わるなら彼は構えたりしないでしょう。

「果てろ!!!」

 投げられる、ボム。
 それは風の壁にぶつかる直前ですべて曲がり、ベルの方へと勢いを増して飛んでいく。

「オレが下手うって、10代目に恥をかかすわけにはいかねぇんだよ」

 その武器の名は『ロケットボム』。
 彼がそれを隠していたように、ベルにももう1つの形がある。

「ベル、始まるわね……」
「ああ……無傷ではあるまい」

 私の呟きに頷くレヴィ。内側で兄さんが顔をしかめたのを感じて、それに同意してしまいそうになるのをなんとか耐えた。

「流しちゃったよ……」

 煙が、晴れる。

「王族の血を〜〜〜〜!!!」

 興奮に頬を紅潮させて、彼は笑う。けたけたと、狂ったように。酷く滑稽に、血塗れで。

「自分の血を見てから始まるのさ――切り裂き王子プリンス・ザ・リッパーの本領は」















あとがき
久々の更新となります時雨……皆様の声の強さに凄く驚かされてばかりな気がします。
いつの間にかでびっくりしたのが、50000HITのアンケート、時雨オンリーの品は私1つも入れなかったんですが、なんだか2つ程増えていて「え、マジ」と思ったんですよねー……時雨人気、強いですね。びっくりですホント。強いな時雨……。更新アンケートやキャラアンケートにも感動しております。誰か0票キャラに愛の手を(笑)
のんびりとした連載ですが、決して忘れてるわけではありません。時雨。ただ、一度完結した作品ですので、未完結作品の方がどうも更新頻度高くなるという^^;    書き直しものんびりと進めていく予定です。楽しみにしてくださっていて本当にありがとうございます!!
1月1日に更新する品としては一番正しい気はしますね時雨(笑)
では次の更新で!!

10/01/01