家光の介入、チェルベッロの登場。予定されていたように、私が知っている通りのストーリーが目の前で展開されて。9代目の勅命がXANXUSと綱吉君に渡されて、その宵の幕は閉じられる。
(その通りすぎて、気持ち悪いわね)
勝敗すら知っている私が、本当にこの場にいていいのか。ほんの少し、分からなくなった。
晴と雷
1戦目は、晴。
チェルベッロの宣言に、向こうの彼らがわいわいがやがやと円陣を組み、ルッスーリアが呑気に明るく照らされたリングに上がる。
「ルッスーリア」
「なぁに?」
んふ、と笑って私を見たルッスーリアに、私は真剣な表情で、言う。
「死なないで」
「……大げさねぇ」
苦笑されて、それでも私はそうとしか言えない。
『敗北』。その結果が分かった勝負に大切な味方を送り出す――それしかできないことが、どうしようもなく、哀しい。それが正しいと知っていても。なんとかなると分かっていても。
笹川 了平がリングに上がり、2人は並ぶ。試合開始の号令がチェルベッロから発せられて、一方的な戦いは始まった。
(見えないリング……)
持ってきていたサングラスをかけて、私はリングを見る。
眩い光に照らされたそこで戦う2人……いえ、了平君をいたぶるルッスーリア、ね……あの子、ルッスーリアのお眼鏡にかなっちゃう子だもの。鍛えられているのも分かるし、あの年齢であそこまで戦えるのは凄いこと。だけれど。
(経験値が少ない)
私達はみんな、実戦で慣らしてきた。練習もした、努力もした、血を滲ませて吐いてやってきた。そしてその果てに、必ず誰かを殺す戦場があった。
それが彼らにはない。そこが、私と綱吉君率いる10代目ファミリーとの差。殺されるかもしれない恐怖、人を殺す失望感、誰かの生命を奪ったことに対する絶望。自分への幻滅、されど諦められない『強さ』。『生きること』。ただそれだけのために、戦うというその心。
(……獄寺 隼人君には、あったわね。そういえば)
それでも、今あそこで戦う幼いボクサーにはないでしょう。
青いアルコバレーノの言葉に、笑った彼を私は見て、そして思う。
(だからこそ……『護る』ために戦えるのかもしれないわね……)
自分のためではなく、誰かのために。
その想いだけで戦う彼らを、私は決して否定しない。否定、できない。それも1つの強さのカタチだと、今の私は、知っているから。
(甘ったるい人達。だけれど、その甘さが、彼らの強み)
証明を叩き割る了平君、それに一瞬だけ怯んだルッスーリアだけど、『塩の結晶』により割ったのだとベルに言われて気付いてまた反撃。やってきた妹にはげまされる了平君。終わらない、戦い。
(護るものが定まれば、どこまでも強くなれる。
ねえ、ルッスーリア。そうでしょう?)
了平君の技が、ルッスーリアの膝を割った。
「片足だって勝ってみせるわ……!」
焦った様子で立ち上がるルッスーリアの背中に、横のゴーラ・モスカが照準を合わせた。
「やめ……」
制止の声は、間に合わない。
ルッスーリアの背中が銃弾に貫かれ、ひゅ、と私は息を呑む。『弱者は消す』。それがヴァリアー。それが……XANXUSの出した方針。だけど、『揺りかご』を共にした仲間を消すなんて……私は……。
「帰るよ、」
「余裕ぶっかまして負けてんぜ、あのヘンタイ」
「……マーモン、ベル」
揺れる私の瞳に気付いたマーモンが、1つ嘆息を零す。
「殺してはいないから安心しなよ。
治療はするらしいし、なんとかなると思うから」
珍しく優しいマーモンの言葉に、私は少し、笑う。生き残ることを知っていても、やっぱり、目の前で撃たれると、ね……。
「ありがとう」
言って、私は煙に紛れて跳ぶ。
明日は雷。レヴィと、ボヴィーノの子牛の戦い。
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雨が、振る。
2時間前に出て行ったレヴィを追うように、アジトとして使っているホテルを出る私達。一度日本支部の家でも買った方がいいのかしら。どうせこれからは訪ねる頻度が増えるわけだし。考えながら、レインコートを目深に被る。
《どうすんだぁ?》
(どうしようかしら)
明日の嵐が終われば、私達の出番。今日のレヴィと明日のベルが勝って、今日大空のリングが私達の手元にくる。後に続く霧と雲も負けて、大空の戦い。
(明後日、本気で戦っていいのかしら……)
《……やるっきゃねぇだろぉ……》
手を抜いたら一瞬で見破られるものね、XANXUSに。それで怒られるのは、嫌ねぇ……。
《『嫌』って問題じゃねぇだろーがぁ……とりあえず、今は観覧に行くぞぉ》
(了解)
始まったばかりの戦い。それを知っているからこそ、自然と私の気分は重たくなる。レヴィが傷だらけになっちゃうことを知っているから、嫌だな、ともう一度小さく私は、今度は口に出して呟いて。試合の場所である屋上に行くために、2階の突き出た部分の屋根目指して、跳んだ。
「相変わらずありえない跳躍だね」
「あなたもできるでしょう? というか、肩に乗って楽しないで」
マーモンがさらっと私の肩でくつろぎながら言うのに、私は律儀に返しつつ3階の屋根を目指す。……私、一応、前世では普通の女の子だったのよ? 今更だけど。人殺しどころか盗みすらしたことがない、病弱で入院ばかりの。それが今じゃあ、これなのよね。そういえば。
「…………なんだか、切ないわね」
「は?」
ぼそ、と呟いた一言に、いぶかしげな顔をするマーモン。それになんでもない、と返して、私はもう一度跳躍。屋上のフェンスを飛び越えて難なく着地。
本当に今更なんだけど、人間として、これってどうなのかしら。
(まあ、今更、よね)
兄さんもありえないことしてるんだから、これくらい、多分、普通……よね?
《……、ヴァリアー自体が普通じゃねぇぞぉ》
(切ないこと言わないで、兄さん)
兄さんのツッコミを切り捨てて、綱吉君の出た〜〜〜!! を聞いて、レヴィも幽霊じゃないのに、と私はぼやく。5歳のランボ君は何も理解していないようで、試合開始直後から雷に焼かれていた。
「……仕方のない子」
《お前、どっちの味方だぁ》
「もちろん、XANXUSの味方よ?」
私の忠誠はXANXUSに捧げたものだってことくらい、兄さんも分かってると思うんだけど。
痛みに耐えかねて10年バズーカーを撃つランボ君。登場した10年後のランボ君は、レヴィの『レヴィ・ボルタ』による雷に打たれて泣き出す。そして、もう一度撃たれる10年バズーカー。
出てきた20年後のランボ君は圧倒的だった。けど、時間切れで5歳児のランボ君が戻ってくる。
「やはり雷の守護者に相応しいのは、お前でなくオレだ」
にやりと笑い、殴る蹴るの暴行を加えるレヴィ。ああいうの見てると、性格悪いってつくづく思うわ。いい人はいい人なのよね、一応。ただ、名前自体が『嫉妬』だし、仕方ないのかもしれないんだけれど……ねえ?
あのままだと死ぬ。それにほくそ笑んだレヴィ、焦る向こうの陣営。その空気を断ち切るように、避雷針の柱が倒れる。
「目の前で大事な仲間を失ったら……」
熱によって雨が水蒸気となった煙の中、彼はファイアオレンジに染まった瞳をあげる。
「死んでも死にきれねえ」
綺麗、と私が呟くくらいに額の炎の輝きは最初みた時より増していた。たった1週間と少し程度の時間で、あれだけの成長。少し前の六道 骸との戦いで元々開花していたものを伸ばしただけだとしても、ちゃんと使いこなせるようになったというのは彼の努力の結果。
リボーンを家庭教師とした9代目の判断は間違っていなかった。多分、そういうこと。
「ほざくな」
仲間が傷つくのは嫌だと、叫んだ綱吉君にぶつけられる憤怒の炎。
来た。私が言うと同時に、弾かれたように彼を仰ぐベル達。炎の熱で気化している水蒸気の煙の中、彼は堂々と立って綱吉君達を見下ろす。
続く会話、いくつかのことを会話の中でXANXUSがバラすのに、おもわず私は苦笑する。ああ、もう。それは内緒にしてこそ価値があることでしょう? 思ったけど、私は何も言わない。それが、彼の選択だと。そう目が私に言ったから。
チェルベッロの1人を焼いて、そして彼は、笑う。
「むしろ楽しくなってきやがったぜ」
あ、笑った。
「ボスが以外の前で笑うなんて珍しい」
「オレの笑顔はのもんだ、ってセリフ王子聞いたぜ」
「8年ぶりだ……!」
…………XANXUS、あなた、何言ってるの……?
「うるせぇ外野」
憤怒の炎が2条放たれて、ベルとマーモンが軽々と避けてレヴィが焼かれる。ちょっとかわいそうだったけど、今回は自業自得よね、と思ったから私は無言を通した。
なんだか空気が微妙になったけど、『ストーリー』は止まらない。流れに流れて、大空と雷のリングが私達の手元に残る。
「XANXUS、」
「分かってる」
声をかけた私に、短く返して。家光達を散々挑発してから、XANXUSは背を向けた。
「……」
「何?」
「ルッスーリアは無事だ」
かけられた言葉は、それだけ。けれど、業務連絡のようなその一言が、彼なりの優しさだと私には分かった。
「ありがとう」
ぷい、と、そっぽを向いた彼の頬は、ほんの少しだけ赤かった。
あとがき
凄いよ私……1巻分まるまるかっとばし戦法しちゃった←
我が家ではここまでやるの初めて、になると思われますかっとばし戦法。某神サイト様はかなり使ってらっしゃったんですが……閉鎖されたサイト様なんですけどね……あそこは神でした。ではなく。
久々の更新となります時雨。誰だ前回そろそろ本格的始動とか言ってたの。私だ!OTL すみませんわざとじゃ決して……いつの間にか2ヶ月ほど経過していただけで(おま) 嘘です、ごめんなさい。もう少し頑張ろうと思いました。大空もそろそろやらないといけない気がします。空空も放置フラグ辿ってないか? いや、これはいつものことか(ぇ) 更新頻度低くなる、って、切ないですね……;;
蓮天、ぽちぽちとやっております。お題、初代時代と現代どっちがいいんでしょう? 始まり時代は書くトコあんまりないので、そんなにやろうとは思いませんが。まあ気が向いた方打ち込みしたいと思います。次こそ最低4ページ埋めるんだ拍手。
では次の更新で!! 大空更新したい!!
09/11/21