「『22歳の秋に』、って」

 信じていなかったのに、忘れられなかった言葉。それを目の前で紡がれて、オレはどうしようもなく泣きたくなる。

……」

 幼い頃に終わった初恋が、今、オレの目の前にあった。

ファミリー対峙

「その趣味の悪い遊びをやめろ……スクアーロ」
「私の趣味じゃなくてXANXUSの趣味よ? ディーノ」

 私の呼び方に気を遣わないといけないくらいに、あなたの立場は複雑なのね。ディーノ。一抹の寂しさを覚えつつ笑めば、はっとした表情で彼は目を逸らした。悪い、とは思ってる、わけね……でも、最初にあなたを傷つけたのは私。あなたがそんな顔をする必要は、どこにもないのよ?

「ツナ達から離れろ。そしてそれを置いて行け」
「離れることは、するけれど……置いて行ってしまっていいのかしら? 本当に」

 からかいを多く含む私の声音に、びく、とディーノの体が跳ねる。昔からあなたは、私に対して隠し事ができなかったけれど……ボスになってからもそうじゃ、ダメじゃないのかしら。私はヴァリアーで、あなたはキャバッローネ。どうやっても越えられない壁が、今の私達にはあるのに。
 なんで知ってる、と問いかけてくる目。私は片目を閉じて、内緒、と唇で紡いでおく。ねえディーノ、私のことを忘れたわけじゃないでしょう? 私はいつだって、先ばかりを見ていたじゃない。だから、今はあなた達の策にはまってあげるの。

「何を知っているんだ! スクアーロ!!」
「声を荒げるのは、あまりしない方がいいわよ?」

 地を蹴って、2階の屋根に私は着地する。あなたは知っているはず。今あるすべてが、ただの始まりにすぎないことを。そしてそれに、あの若すぎるボンゴレ達が巻き込まれる運命にあることを。

「約束を果たせただけでも、嬉しかったわ」
「待て……っ!!!」

 名前を、呼ばれる。それがどうしようもなく嬉しくて、私はふわりと微笑んだ。知っている。あなたが誰よりも優しくて、どうしようもなく甘いことを。知っている。私があなたの特別だったことを。勘違いでもなんでもなく、いつだってあなたは私を大事に思ってくれた。
 そう。私がスクアーロじゃなくて。あなたがディーノじゃなければ。もっと話は、簡単だったのに、ね。

「大丈夫よ、ディーノ。あなたが心配することは何もないわ」
「え……?」

 問い返したディーノににっこりと笑い、私は剣に仕込んでいた爆薬を下に投げつける。噴きあがった煙に乗じて、私はディーノの横を走り抜けた。

「あなたが思うほど、彼らは弱くないわ」

 そう耳元に囁いた私は、煙の中でコートを脱ぎ捨てて剣を外しケースにしまう。そして、いくつかの屋上を経由してから人の波に私は混じった。

(約束は、続くのよ。ディーノ)

 だって、あなたは知っているでしょう? まだ何も、終わっていないことを。終わるどころか、始まってすらいないことを。



*******************



、君、分かってたでしょ」
「何が?」

 マーモンの問いにわざとらしく首をかしげて、私は問いかける。む、とした表情で私を見上げる赤ん坊は、ごまかされないよ、と私に言った。

「ボンゴレリングが偽物だったって、君が気付かないわけがない」
「その自信、どこから来るのよ」

 苦笑すれば、君の今までの行動さ、と言うマーモン。『アルコバレーノ』の名は流石伊達じゃない、と言うべきなのかしら……私の先を見通した行動に、マーモンは気付きだしているみたいね。

《だからお前は甘いんだぁ》

 内側の兄さんが嘲りを呟いて、私はうるさい、と心の中で言い返す。マーモンが気付いた理由の1つに兄さんの精神に触れたってこともあるでしょうし、私だけが悪いわけじゃないわ。そう私が反論すれば、兄さんは唸って黙り込んだ。口で負けて拗ねるだなんて、ちょっと子供っぽいわよ? 兄さん。

「でもね、マーモン。分かるわけないでしょう? そんなこと」

 じっとフードの奥から、彼の目が見つめてくるのを感じる。私は穏やかな目のままにそれを見返して、少し首を傾げてみせる。しばらく見詰め合った私達。最初に負けを認めてくれたのは、マーモンだった。

「今はそういうことにしておいてあげるよ」
「あら、信じてくれないのね」
「日々たくましくなる君を信じろってのも無理な話だよ」

 それ、兄さんにも言われたわ。一体なんのことか、私には本当にさっぱりなんだけれど。

「でもね、覚えておきなよ、
 君は、ヴァリアーの・スクアーロだ」

 霧に包まれて姿を消すマーモン。レヴィと一緒に、日本へ行く準備でもするのかしら。私は張り詰めていた緊張を解いて、息を吐き出す。マーモンは聡すぎるから、時たま嫌になるのよね。

「そんな分かりきったこと、言わないで欲しいのに……」
《お前はクソボスのもんだからなぁ》

 くつくつと笑う兄さんに私はむ、と少し機嫌を悪くする。
 分かりきったことだけれど、からかいを含めて言われると少し苛立つのよ? 思いつつ私は立ち上がり、剣をしまっているケースを肩に立ち上がる。義手の調子も悪くないし、大丈夫、ね。

「頑張らないとね、兄さん」
《オレにすら全部は教えてくれねぇクセに『頑張る』も何もねぇだろーがぁ……》
「だって、兄さんは『この世界の人間』じゃない」

 迷い込んだその果てに、『この世界の一部』となった私とは違う。存在を許されているのだと分かった今でも、私の存在が『イレギュラー』だという現実が変わったとは思わない。
 だからせめて。

「役者は役を役通りに演じるもの、でしょう?」

 気難しい雰囲気の沈黙を兄さんは返し。深々とした溜め息をその後についた。

《お前は、『お前』だぁ》
「ええ。私は、・スクアーロよ」

 そうでしょう? と。笑えば兄さんはくそっ、と小さく毒づいて意識の中にもぐりこむ。一体何に怒ったのか、拗ねたのか。大体分かっていながらも、私は分かっていないフリをして歩き出す。またXANXUSに怒られそうね、と私はそっとぼやきつつ、集合場所と言われた玄関ホールでみんなと合流した。

「……行くぞ」

 静かなXANXUSの号令に、私達は従う。
 向かうは日本、並盛。



*******************



「先発はレヴィ?」
「ああ。それにマーモンが探索でついていってる」

 XANXUSに問えば、無愛想ながらもちゃんとした返答。またお金がかかるわね、と苦笑すれば気にするな、と彼は口の端を少し持ち上げて優しく笑った。マフィアのポケットマネーをなめるな、ってことかしら。私の講座もかなりのものだけど……ヴァリアーのボスであるXANXUSに比べたら、きっと些細な金額なのでしょうね。

「でもね、XANXUS。私の情報によると、なんだけど」

 彼の瞳がこちらに向いたことを確認してから、私は続きの言葉を発する。

「誰かが狙われていると、放っておけない人達ばかりみたいよ? あちらの『10代目ファミリー』は」
「……」

 がたん、と。椅子を倒して彼は立ち上がり、コートを羽織って歩き出す。私はその後ろについて、自由に遊んでいるみんなに連絡を取るためにケータイを取り出した。

「ああ、ルッスーリア? 出動らしいから、戻ってきて欲しいの。
 ただ、場所が分からないのだけれど……そうね……場所はマーモンにでも聞いて。そろそろベルと一緒にいると思うわ」
『ちょっと予定より早くなぁい?』
「ボスの気まぐれ、よ」

 くすりと笑ってそう言えば、『ボス』と呼ばれたことが気に入らなかったのかぎろり、とXANXUSが私を睨みつけてくる。ごめんなさい、と目で謝りながら、私はルッスーリアとの打ち合わせを終わらせて通話を切り、準備完了、と私はXANXUSに伝えた。

「行くぞ」
「はい」

 そして私達は、邂逅の場所へと急ぐ。後ろにゴーラ・モスカを、連れて。



「レヴィ、ストップよ」

 背中のパラボラを抜こうとしたレヴィにそう私は声をかけて、地を蹴る。それに倣うようにXANXUS以外の5人が同じように地を蹴って、レヴィの隣に並んだ。

「1人で狩っちゃダメよ」
「他のリング保持者もそこにいるみたいなんだ」

 ルッスーリアとマーモンの言葉に、レヴィが瞠目しつつ下で構える人達を睨む。私はみんなの後ろからゆっくりと出て行き、私達を仰ぐ彼らを見下ろした。

「久しぶりね、もう1つの『10代目ファミリー』のみなさん」
「で…出た――っ!!!」

 綱吉君のそんな言葉に、私はむっと唇を尖らせる。あのね、私、お化けだとか妖怪だとかじゃないのよ? それじゃあまるで亡霊扱いじゃない。
 山本 武君と獄寺 隼人君の射殺すような視線にどこか心地よいものを感じつつ、私は深く息を吸う。

「雨のリングを持つ子は、誰?」

 穏やかに問いかけた私に、驚きつつも1人が名乗り出る。

「……オレだ」

 分かっていた通りに、それは山本 武。

「あら、そう……今のあなたなら、3秒で殺せてしまいそうね……」

 呟く私に、すっと彼の瞳が剣呑に細められる。兄さんが内側で、もっと言えぇぇっ!!! とうるさいけれどそれを無視しつつ、私は横にどきつつ笑いかけた。

「ちゃんと、強くなってね?」

 どいた私のその場所を埋めるように、彼はゆっくりと私の横に立つ。半歩後ろに下がり、私は彼の斜め後ろという定位置に落ち着いて発言を控えた。

「沢田、綱吉」

 ゆっくりと、仇のような人間の名を呼ぶXANXUS。ひぃ、と、怯えた声をあげてへたりと座り込む沢田 綱吉。
 今、この瞬間に、本来の意味での私達の舞台が、始まった。

















あとがき
意外と進みませんね……場面場面丁寧に書くつもりないです晴と雷。月歌でそれはやってるので、行動もそこまで変わりませんのでまあ適当に。
時雨人気に軽くびびってました。これだけ人気高いなら、と書けない時期まったく手をつけずにいたせいで更新遅れましたが……大分書けるようになってきたのでそろそろ本格的にスタートする予定です。私も時雨ヒロイン大好きですし、時雨は書いていて楽しいので頑張ります!! 大空・月歌・空空ももちろん頑張りますよ!!!
蓮天はそろそろ拍手変更予定ですのでその時に。1話終わりました。後4話。ポケモンもう1つとREBORNのお題沿いを3つくらいー、とか……替え歌やらなんやらリクエストあれば受け付けておりますです。
では次の更新でー!! 台風で休校だったのです。そういえば。

09/10/08