左手の剣がすべての対象を真っ二つに斬ったのを、私は見ないでも感じていた。周囲で観察していた部下達がおお、と感嘆の声を漏らし、私は集中を散らすために息を吐く。中の兄さんが、上出来だ、と褒めてくれたのが嬉しくてちょっと笑った。
 もう、義手は使いこなせるようになった。これで私も、戦える。

(兄さん)
《なんだ?》

 内側の片割れは、私の呼びかけにちゃんと応えてくれた。

(代わる?)
《……いや、いいぞぉ》

 バレるしなぁ。とぼやく兄さん。もうバレてもいいのに、と私は思いながら、左手の剣を取り外した。

XANXUSの作戦

《これからお前はどう動く?》
「私が知る『スクアーロ』の通りに。未来を変えるわけにはいかないけれど……」

 あの人に、勝って欲しいのも私の本音。
 だから私は全力であの人に尽くす。それくらいしか、私にできることはない。兄さんは私に気を使って自分の存在が部下達にバレないように頑張ってるけれど、言ってしまうともう私は幹部でXANXUSも私を使ってくれるみたいだからそこまで気を使わなくてもいいのにね。

「でもね、兄さん。一番は」

 憧れていたものを、私はちゃんと手に入れた。あ゛ぁ゛? と問いかけてきた兄さんに、私はくすり、と笑って答える。

「私は私のやりたいように生きる。もう私は、それが許される体なんだもの」

 前のように、制限しかない体なんかじゃない。健康体の丈夫な体があるのだから、生きたいように生きる。その1つが、あの人に尽くすこと。それでいい。私はもう、納得してる。

「我ながら、物好きだとは思うけどね」
《それこそ、『今更』だなぁ》

 私の口癖を使い、くつくつと笑った兄さんに私は驚いて目を瞬く。

「嫌いじゃなかったの? 私の口癖」
《大嫌いだぜぇ、お前の口癖》

 じゃあなんで使うの? と問いかければ、今使うのには丁度いいだろ、という少し拗ねた返答。まあそうだけど、と私は返して嫌いなら使わなければいいのに、と内心だけで思った。フィルターかけなかったから、どうせ丸聞こえなんだけどね。ああ、怒った。

「ゴメンゴメン」
《……ふん》

 兄さんが拗ねちゃったのはそのままに、私は休憩室に行く。XANXUSの趣味かひたすらにお金を使っていて、高級感は溢れる場所。ここだけ見せられて暗殺部隊のアジトです、って言われても信憑性がないくらいな感じかしら。

「ム、。久しぶりだね」
「ししっ、王子のために来てくれたの?」
「そんなわけないでしょ、ベル。久しぶり、マーモン。任務は成功?」
「当然だよ」
「つまんねー」

 マーモンとベルにそう言葉を返せば、ベルは笑いながら言ってマーモンはこくり、と頷く。どうせ今回も大金せびったのね、とマーモンに対しては思いながら私もソファーに座った。
 しばらく2人と雑談を続けて、たまに兄さんと代わったりして。ベルにお菓子をねだられたから簡単なパンケーキを作って持ってくると、そういえばさ、とベルがパンケーキに手を伸ばしながら口を開いた。

「なんでって、ヴァリアーに入ったの?」
「そういえば、僕も知らないね」

 フォークでマーモンもパンケーキをつつきながら私に言う。言ってなかったかしら、と私が首を傾げると2人揃って頷かれた。ちょっと、それは失礼だと思うんだけど、2人共。

「そう、ね……」

 理由……か。

 ――そんな、どうして……!!――

 耳の奥で木霊する、たった1人の親友・・の叫び。大事な人の制止を振り切ってでも歩み続けるだけの理由が、あの時の私にあったのか。それは、未だに私には分からない。そして、今も。それでも、この場所にいるのは。

「あの人に、惹かれちゃったから」

 哀しい瞳、綺麗すぎる紅。憤怒に染まりきったあの瞳に、ほんの少しくらいは救いがあってもいいのに、と私は思った。どれだけの時間がかかるのかは分からない。だけれど、あの瞳が、安らぎに染まる瞬間に私は傍にいたい。そう、思ってしまったから。

「あの人の憤怒を、見ちゃったからね。きっと」

 ヴァリアーでやっていこう。そう決意させたのは、誰でもないあの人だったのだから。

「やっぱさ、」

 ベルがパンケーキの最後の一口を放り込みながら言った。

はボスしか見てねーよなー」
「そう?」

 私は意外な言葉に首を傾げながら問う。そりゃあ、あの人がボスなんだし最優先にしてるとは思うけれど……でも、それが普通だと思うのは私だけ?

「自覚がないなんて、余計にタチが悪いよ」

 マーモンが溜め息混じりにそう言って。

《てめぇは鈍い》

 そう兄さんにまで断言されて、私はなんとなく疎外感を味わうことになった。そんなに鈍いのかしら、私って。悩んで黙り込んだ私。マーモンがパンケーキを食べ終わって口を拭いていると、あらまぁ、という特徴的な声が聞こえてきた。

「みんな揃ってなんのお話?」
「そろそろ会議だぞ、お前達」
「ルッスーリア……それに、レヴィも」

 そういえば、今日は会議があるだとかなんだとか言ってたわね……XANXUSが朝議で。あまりにも適当そうな感じだったから忘れてたわ。あの人、いつでも適当だから今日も遅れてきそうね。

、貴様今失礼なことを考えたな」
「あら、なんのこと?」
「ごまかすな。ボスの悪口を言っただろ」
「そんなことないわ。ちょっと彼が適当、って思っただけ」
「それが悪口だと言うのだ!!」

 怒られて私は少し首をすくめる。そしてすぐさま、青い炎に包まれて兄さんに無理矢理代わった。

「てめ、!! 何勝手に代わってやがる!!!」
《レヴィの相手面倒なの。代わりにお願いね、兄さん》
「お前日々ずぶとくなってるぞぉぉぉぉっ!!!」

 耳を塞いで私は兄さんの言葉を無視する。だってここ暗殺部隊じゃない。日々ずぶとくなっていかないと、精神疲労激しいのよ。私だってずぶとくなりたくてなったんじゃないわ。全部XANXUSのせいなんだから。

「スクアーロ!! 今お前の妹がまたボスの悪口を!!」
「ああああもううるせぇぇぇぇっ!!」

 あ、兄さんがレヴィを蹴った。まぁお下品、ってルッスーリアが笑ってる。ベルは余っていたパンケーキを持ち上げて逃げ出すしマーモンはちゃっかりルッスーリアの肩に乗って逃げた。こんなだからXANXUSにかっ消されるのに。
 兄さんのケガは兄さんのケガだから、私は呑気に観戦する。でも、みんな、そろそろあの人の気配近付いてるんだけど。

「るせぇ、カス共」

 ぴたり、と全員の動きが止まり。殴られる、と予知したらしい兄さんが青色の炎をまとって私に交代した。ちっ、とXANXUSが舌打ちしたから、兄さんの予想は全然間違ってなかったらしい。お疲れ、兄さん。

「オッタビオ……それに、XANXUS」

 私の言葉にぺこ、とオッタビオが頭を下げて、XANXUSがふん、と鼻を鳴らす。オッタビオ、か……、と私は顔には出さず兄さんにだけ聞こえるように呟いた。いぶかしげな反応があったのを無視して、私は静かにソファーに座る。それにみんなも倣って、全員がイスについた。

「まずは、宣言だ」

 にやり、とXANXUSの唇が笑みの形に歪む。ああ、今は何日だったかしら。そんなふざけたことを私は考えながら、その笑みに背筋に震えが走るのを感じた。違うこれは、震えなんかじゃない……興奮、だ。

「オレは今この瞬間に宣言する」

 今日、この日、ボンゴレの歴史に新たに確かに刻まれる。たとえ未来は失敗でも、過去数十年史上最悪のクーデターとして、この宣言した日は必ず歴史書に記されるのだろう。

「ボンゴレに、」

 紅が、煌く。その色合いは憤怒と期待、そして歓喜に染まりあがった、彼の炎の色だった。

「復讐する。てめぇらも、ぶっ壊せ」

 奇しくも、その言葉は未来10代目となる男の誓いの言葉でもあることを私は思い出しながら、静かに立ち上がってXANXUSの下に跪く。私に次いで全員が同じように跪き、私の上でXANXUSが満足げな笑みを浮かべたのを感じた。
 そして新たな舞台が、幕開ける。




















あとがき
というわけで次から揺りかご編です。うわあ、空気ぶち壊しv(だからキモイ)
ようやく一番人気が大空からこちらに移行しつつあることに気付いた私です。管理人失格? ははは、今更じゃないですかそれこそ(ダメ人間続行中)
ようやくここまで辿りつきました。時雨は一人称でページ稼ぎが大変です。DreamMarkerさんが休止中なものだから指示用語必死にコピーして頑張っております。ビルダー最高。「?」で出てくれるからすっごい楽です。月歌書くのは大変なんですけどね。2つ名前あるから……。
では拍手返信です。

レイさん
 優璃は記憶力が悪いんじゃなくて、興味ないことをあまり覚えない感じです。ポケモンにはその頃好きだけど興味はなかったから覚えてない。胃痛持ちが衝撃的だったけど興味そのものはなくて正一を覚えていない、って感じです。ちなみにこの記憶方法はリボーンに叩き込まれました。
 マンドラピクミン読まれましたか? 私もスバメ大好きです。オオスバメに進化された時にかわいくない、と落ち込んだ記憶があります。私も未だカントーのジムバッジ全部言えるので大丈夫ですよ!! リクエスト期待しないでお待ちください。私は期待して待ってます←


18日、22:42にフリリク拍手にリクしてくださった方
 時雨番外ですね、承りました!! お名前を言ってくだされば○○様へ、という形で題名の前に書かせていただきますので是非お名前を教えていただければ嬉しいです。
 リクエスト本当にありがとうございます!! 時雨番外の内容はXANXUSと兄妹のやり取りでいいですか? 酒ネタを書かせていただきたいのですが(それお前の趣味)    リクしたい内容があるなら是非また拍手でお伝えくださいまし。……やった、リクエスト(黙れ)


月歌だとかも更新したいです。そんなのがいっぱいあります。でも勉強もしないとですね!(開き直りすぎ)

09/05/19