XANXUSは静かにの病室に向かい、スクアーロはその気配を感じて立ち上がる。

「しっかりなぁ」

 ああ、嫁を出す父親の気分はこんなものか。親父くさいことを考えながら、22歳の鮫は病室の外に出て行く。兄の心には当然ながらそんな寂しさもあったが、それより何より無自覚カップルからようやく解放される、という安心の方が強かった。

傍にいても

 目を閉じて上半身を起こして、私は足音だけに耳を澄ませる。聞きなれたそれは、音を殺しながらも己の存在を主張する彼らしいもの。兄さんに言われて気付いた想いをまだ整理できていない私は、心臓を高鳴らせながらも彼を待った。



 扉が開いて、私は目を開ける。

「XANXUS……」
「話がある」

 真摯な目で見られれば頷くしかない。そんな私に少しほっとしたように息を漏らして、ふわり、と彼は笑った。ベッドにさっきのように座って、私と視線を合わせる。頬が赤く染まるのを感じたけれど、目は逸らさなかった。XANXUSの右手が私のおとがいに伸びて、少しだけ持ち上げられる。額と額がぶつかって、そっとXANXUSが囁いた。

「好きだ」

 はらり、と。その言葉に涙がまた毀れた。それはXANXUSに勘違いを与えてしまい、少し離れたXANXUSはオレは嫌か? と問いかけてくる。首を私は横に振って、親友がやってくれたように抱きついた。

「私も、好き……」

 大好きです。愛してます。あの日あなたに出会った日から、私の心も体もあなたのもの。綺麗なのに哀しみを湛えたあの瞳を、私は今でも覚えている。
 紅玉ルビーのような瞳、世界を憎むあなたの心。私の雨が、そのすべてを流せたら――

「愛してる……!」

 叫ぶように渡した言葉に、XANXUSは私を抱きしめ返した。数十秒間の抱擁の後、私達は見詰め合って唇を重ねる。彼のそれは吐息すらも奪うようで、獣のような乱暴さは『らしい』の一言だった。

(ああ――)

 死にたくない。消えたくない。この人の傍に、ずっといたい。どこまでも続く我が侭が脳を支配して、彼の存在そのものが私を埋め尽くすよう。きっともう、私はこの人がいなければ生きてはいけない。
 熱情と劣情。慕情に恋情。いくつもの感情が、触れ合う唇と舌からお互い同士に流れていくようで。XANXUSの腰に回された腕の力が強くなり、私も首に回す腕に力を込めた。嬉しすぎて涙が止まらない。こんな風に人を愛せるなんて、私も『私』も知らなかった。
 名残惜しげに唇が離されて、少しあがった息が私の口から漏れる。

「XANXUS、XANXUS……」

 確かめるように何度も名を呼び、バードキスを繰り返す。

「なんだ、

 そういえば、この優しい瞳をこの人はいつだって私だけに見せてくれた。そんなことにそれこそ今更に気付きながら、私はXANXUSを見上げる。ねえ、あなたは赦してくれる?

「私は、あなたの傍にいても……」

 いいですか?
 問うことすら赦さずに、XANXUSはまた私の唇を噛みつくように奪った。それに身を任せて、私は返事を待つ。深く荒くどこまでも奪うキスがしばらく続いて、そしてまた唇は離れてXANXUSは私を強く抱きしめた。

「傍に、いろ」

 命じる言葉は、残酷なほどに優しかった。
 私はそれにまた涙を流して、彼の胸に身を預ける。命ある瞬間はもちろん、死す瞬間も、冥府でも。私はずっといつまでも、永遠にあなたの傍に。

「はい」

 幸せに涙は止まらない。私は、・スクアーロは自分の居場所をようやく見つけた。

「愛してる……」

 そっと、XANXUSが耳元で私に囁いて。堪えきれぬ歓喜を私はXANXUSに抱きつくことで示した。






































私達は手を取り合って歩いていく。どこまでも、いつまでも。この命が、続く限り
だって、これが続いていく長い道のりの幕開けだから――

09/07/05