硬質な音が小さく響き、最後の1つが置かれる。7つのデザインに統一性のあるリングが氷を中心として円状に置かれたのを持ってきた者は確認して、指を鳴らした。同時に、オレンジ、レッド、ブルー、イエロー、グリーン、バイオレット、インディゴ。7つの炎が燃え上がり、溶けることのなかった氷の一端が消えた。
目覚め
秋空に空色が変わりつつある頃、私はカレンダーを見て違和感を覚えた。9月……日本では今頃、沢田 綱吉達が六道 骸の嫌がらせに泣いてる頃だけれど……考えれば10月に私達って日本に発つんだから、そろそろ戻ってくるのよね。あの人。
《どうした? 》
兄さんの声に、なんでもない、と言いながら私は空を仰ぐ。
(ああ――)
ようやく、逢える。そんな仄かな期待に私は微笑む。XANXUS、と、久々に紡いだ言の葉は懐かしさといくつもの感情にまみれていてどれだけあの人との再会を再開を、私が望んでいたのかを自覚することになった。
きっと今の私は、あなたに胸を張って後ろについて行ける人間よね?
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9代目はふ、とした予感に顔をあげる。
(あまり、いいものじゃないな)
超直感の示すものに表情を曇らせながら書類にサインし、いくつかのものは却下していく。その中で、研究部署からの書類に9代目は眉根を寄せた。つい最近イタリア軍に売りつけられたその情報を実行する気はなかったし言うほどの損害でもなかったからお蔵入りにしようとしていたのだが。
「造るつもりか」
呟き、保留の方に押しのける。あまり好みの代物ではないが、戦力になるのは間違いない。マフィアのボスとしては決断するべきところだな、などと内心だけで考えながら秋空を仰ぐ。家光にでも相談しようか、などと思ってしまうのが9代目でもあった。門外顧問としても彼を見ているが、気の許せる友人でもある。友人に相談するくらいは構わないだろう。
(さて)
それでも嫌な予感が消えないことに、苦笑した。
一方研究部だが、許可を貰う前にすでにプロトタイプのみは完成させていた。そのタイプですらかなりの戦闘力を誇り、軍事利用だけではなくいくつもの目的に使えることが分かったのでこうやって9代目に書類を提出したのだ。一応隠蔽工作などもしていたが、所詮アマチュア。情報はいくつかの場所に漏れているのは当然であり、その1つに『彼女達』もあった。
「ここです」
「なるほどな」
2人のよく似た女に連れられて、1人の男が姿を現す。古参の上司の1人が、傷跡という新たな特徴を加えた彼の姿に顔を青ざめさせてひゅ、と息を呑んだ。どうして、彼が、ここに。
「いかがでしょう?」
「これで使えるという証明になったかと」
ふん、と1つ男は鼻を鳴らす。紅い目がじろり、と研究所全体を見渡してプロト・モスカに目をつける。デスクに近寄り設計書を手に取り流し読みをして、唇が弧の形に歪んで笑みの形を作り出した。
「いいだろう、使ってやる」
ありがとうございます。そうピンクの髪の女は頭を下げながら言う。
燃料の案の1つ。そこに、『死ぬ気の炎』という文字を見つけた男はにやり、と笑って1人の老人を思い出す。いいアイディアだ。丁度何かに使おうと考えていたのだし丁度いい。
「待ってろよ、老いぼれが」
呟いてから顔にある、凍傷の傷跡に男はそっと指先を這わせた。
「……」
――待……って、る――
あの言葉を信じて、自分はこの場所に戻ってきたのだ。
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にやり、と兄さんが顔に出さず笑うのに私は内側で嘆息する。いいカードよね、確かに……ダイヤの10、J、Qにクラブの6にハートの3。狙おうと思えばロイヤルストレートフラッシュを狙えるカードだから私だってこれは嬉しい。だけれど、流石に4時間もこのカジノ場にいるとなるとそろそろ飽き飽きもしてくるでしょう?
2枚捨てて2枚を貰う。来たカードはハートのKとスペードの7。不機嫌になった兄さんに、ただのストレートでいいじゃない、と抗議すれば、いいわけねぇ、とのお言葉。
(これでロイヤルストレートフラッシュを決めるから意義があるんだ)
《男の浪漫に女の私を巻き込まないでくれる?》
私の言葉に、ふん、と兄さんは鼻を鳴らした。
(女下着の買い物を見続けるオレの気持ちを知れ)
……今日下着を買いに行ったのが少し長引いちゃったんだけど、それで腹いせにこんなことをしてくるのね。そりゃあ男には刺激的なものもあったから怒るのは分かる。でもこんな腹いせをされるのもムカついてきて私は腕を組んで拗ねてやる。
(……拗ねるなぁ)
《じゃあ、これで終わってね》
私が言えば、分かった分かった、とおざなりながらも了承の返事。満足して私は頷いて、兄さんの持ちカードを見た。揃っていないのはダイヤのAか9……か。よくまあ、これだけ揃えたものね。今回の兄さん、運がいいのかかなりいいカードがいつも配られる。……でも、きっとどこかでこの付け合せが来るんでしょうね。
(うるせぇ。今日のオレは運がいいんだ)
機嫌よく言う兄さんに私は苦笑した。私も兄さんが大勝するのは嬉しい。だってそのお金できっと何か奢ってくれるもの。体を共有しているかもしれないけれど、使うお金や給料は別々。だから私達だってそこはちゃんと区別していて、奢る時はお互いのサイフにいくらかお金を渡す。さて、今回はいくらくれるかしら。
「ロイヤルストレートフラッシュだ!!」
うまくダイヤの9を揃えた兄さんがコールしてカードを出す。周囲全員が嫌な顔をして大負けだ、と両手を挙げた。自慢げに兄さんは瞳を細めて金をよこせ、と片手を大仰に出してみせた。チップの山が兄さんの手に渡り、換金のために兄さんが立ち上がろうとしたその瞬間。頭を殴りつけられて兄さんはチップに沈んだ。
「何しやがる! って」
兄さんが目を瞠り。そして私に体を交代した。
「ちょ、兄さん!?」
逃げたわね。
「出てきたか」
チップの1つを拾い上げながら私は見上げる。そう、か……今日だったのね。あなたが目覚めるのは。
私は笑って立ち上がり、背伸びして私よりずっと上にあるその頭を撫でる。そんな捨てられた幼子のような目をしないで欲しい。私はちゃんと、あなたの傍にいるから。
だから、あなたにかける言葉はこれが一番いいのでしょう。
「おかえりなさい、XANXUS」
「……ああ」
紅の瞳が安堵と安らぎに染まるのを見て私も嬉しくなる。でも兄さん、殴られたからってXANXUSを認識すると同時に逃げるのはどうかと思うのよ。
《条件反射だ》
「とりあえず、換金は自分でしてよね」
嫌そうな声を出した兄さんを私は睨みつけてやる。私はカジノ嫌いなんだから。日本は賭け事禁止だって知ってるでしょ?
新しい計画を聞いた私は、また無茶な、と溜め息をついたけれどXANXUSらしい計画になんとなく安心もした。原作通りに全部が進んでいるのは気に入らない。だけど、だからといってこの人の心を無視するのはもっと嫌。
「……やるの? XANXUS」
「お前に言う必要があるのか?」
絶対的な信頼を見せ付けてくるその言葉に、私は首を横に振った。
どこまでだってあなたについて行きましょう。たとえ行き着く先が地獄の底だとしても、私はあなたの後ろにずっといてあなたの背中を護る。そう決めて、8年の間待ち続けたから。
「あなたの心のままに」
そして、私達の最後の物語が幕開ける。
あとがき
はい難産でしたー!(ぇ)
いや、本当に書き上げるの大変だったんですよ。中々ページが埋まらなくて。うふふ、チャットの方に悪戯しながら書いているのでテンション高いのですよ。ええ女神の如く見守っておりますよ皆様の雑談を(誰だよお前) 今日は歯医者帰りに御影高杉のクッキー買いました。おいしいです。わあ、こうもチョコの味を引き出しながら甘みを仄かに際立たせしかもアーモンドという存在で歯ごたえをカバー……素晴らしい! 紹介してくれた我が友よありがとう!!
では拍手返信
レイさん
だから私文章上手じゃないですよー。スキルコピーしたらいろいろとムダ属性まで入るからやめた方がいいです。ヒロインがカッコいいのは嬉しいです! この章でもカッコよければいいな、とか思います。ええ(をい) チャットでいつもお話しているのでいろんな返信はまたそちらで(笑)
矢奈さん
引き抜き事件驚いていただけて嬉しいです! 結構唐突に時雨は話が進みすぎるのでまた書き直すんですけどね……orz とりあえずXANXUSとああもあんなに仲いいのにお互い気付かないのが凄いなぁ、とか私も思います。え、なんで気付かないのさ。とか。
熱出たら休むように心がけさせていただきますです。ご心配かけてすみません。スレツナ連載楽しみに待っていますね! そちらも無理しないよう頑張ってくださいまし!!
フリリクを頼まれた方々へ
フリリク承りました! 7月下旬より書き出す予定ですので、シチュエーションなどでご希望があればまた拍手でおっしゃってくださいませ!
では次の更新でー!! アンケートでもヒロイン人気だなぁ。
09/05/29